恍惚の人

レッスン仕事からの帰り、自宅最寄駅に近づくにつれ、そうだ、今日は昼間にジムに行って
1000kcalも消費したことだし、晩飯は食ったが、缶チューハイとつまみで本日のエンディングコーダとしようではないか、と自分自身に提案し折り合うことにした。ふふふ。
小さな駅ビル内の西友で塩えんどう豆と小魚アーモンドを買い、我ながら全く婆さん趣味なつまみよのう、と苦笑いしながらレジへ。
するとレジ前の列最後尾には80代後半とおぼしき本物のお婆さんがなにやらちまちまうごめいているではないか。
お婆さんの前の人は既にレジを終えているのに、お婆さんは手許の何かが気になってなかなか進んでくれない。微かにイラっとしたが、ほどなく状況に気が付いたのかお婆さんは前に進みカゴをレジに置き、後ろに並んでいたオレを気遣ってピョコン、と頭を下げた。勘定の段になり、大きな寿司盛りトレー二つ分の計算が出来ないのか、レジの女性と一緒に財布の中身を探るのを手伝ってもらう。レジの女性は「いいですか?このコインとこのコインを頂きますよ」という仕草で確認する。かなり耳が遠そうなのが分かる。
自分の番もほぼ終わり、品物を別のテーブルに移したら、その同じテーブルでお婆さんに駆け寄ってきたオヤジがいた。(オレより老けてみえるが、意外にというか大体そういった場合はオレと同じか案外年下だったりするのだ。)そのオヤジがホッとした柔和な表情ながらも声は厳しく「おふくろ、こんな時間に何やってんだよ!探し回ったんだぞ!何某(兄弟かな)と相談して、もう警察に相談しよう、と決めてたところだったんだよ。まったくさー!」と相変わらず、ちまちまソワソワもぞもぞしているお婆さんの寿司を取り、丁寧にレジ袋に入れて、そして駅南口に手を引いて去っていった。

オレは北口の階段を下り、線路沿いをゆっくり歩きながら、今の光景を反芻した。

オレのお袋は晩年だいぶトンチンカンになったとはいえ、あんな風な認知症にはならなかったな…。
はっはっは、と笑おうとしたら、どっと目頭が熱くなり、胸がいっぱいになった。

…あのおそらくオレと同世代の息子はいかにも日常的に大変そうな気配だったが、しかし親思いの心が滲み出ていた。また、おそらくは全く時間的にも見当違いの大きな寿司盛りを息子がゆっくりレジ袋に入れて手伝っていたあのワンシーンには深くて温かな安堵が漂っていたのだ。

………。


(母さん……ボケボケでも…ヨロヨロでも…生きててほしかったよ…会いたいよ、母さん…!)


線路も小道も家々も季節柄か今夜はやけに濡れてやがるな。


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by DAIROBARIBARI | 2013-07-05 00:56 | 大ARY  

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